愛を。

看護師ケアマネ。愛すべき利用者との関わりをちょっぴりフィクションほぼノンフィクションで。(記事の編集を随時行っています)

セーターを編む人

その人は寝ていた。

昼間何もすることが無かったら寝るしかないよね。

編みかけのセーターは私が担当になって4年以上経つが、殆ど進んでないような…

行く度に「少し太りなさったんじゃない?」と言われ、毎月見た目わかるぐらいの1㎏太ってたら3年で36㎏オーバーになりますか?笑

しかし最初にお会いした時は今より痩せていたので、この人からすれば経年変化じゃなく、まだ数ヶ月しか経っていないのかも?

その証拠にこの施設に入ってもう20年近く経つのに、そんなはずはない、まだ2〜3年しか経っていないと言い張る。

「息子は何で離婚したの?嫁が悪かったんじゃないかと思うのよ。私の面倒見たくなかったんでしょ。あの嫁は失敗だった」。

「息子は何の仕事してるの?」。

離婚の原因は知らないけど、お仕事はこれこれと聞いていますよ、大丈夫ですよ、あの息子さんならと毎回お話ししている。

息子さんの都合の良い日に合わせて同行訪問させて頂きたいのだが、最近メールの返事が滞っている。

何かあったかな?

お母さんが心配してるような、女に騙されなきゃいいけど?て?

いえ勿論こんなことケアマネ業務の範疇じゃありませんが。

息子さんと一緒の時、こんな話を持ち出されると息子さんが居心地悪いだろうと、私も話しを逸らそうと頑張ります。

 

90を過ぎた人に説教なんてできないし、するつもりもないが、いくつになっても人間って揺れ動くんだなと思う。

迷って悩んでる年長者に、一生懸命考えてることを話すこともある。そんな時はケアマネとしてじゃなく1人の人間として。同じ人間として。老いて死にゆく同士として。

 

痛い足を引きずりながら歩行器を押して、毎日1日3回食堂まで歩く。

分厚い本と編み物はベットの上に。いつでも手を出せるように。

お菓子は切らさないでね。

施設に預けていたら安心だけど、空っぽの引き出しはお母さんを思い出さない息子の心のよう。

そんなことはないか。

お母さんを大事に思っていても、会ったら会ったで何を話して良いかわからないものかもしれない。

現に私も息子と2人になると、何を話して良いかわからないし。

ちゃんとご飯食べてるね?

仕事はどうね?

…もう詰まった…笑

 

でも会話って必ずしも必要じゃないかも。

黙ってても、たくさんお喋りしなくったって、会いにに来てくれたらきっと、きっと嬉しいはず。

少しの時間で良いからね。

 

ケアマネがすることと言ったら、お母さんに会った様子とまた来月お会いできたら良いですねとメールすることです。