小さい頃働く両親に代わっておばあちゃんに育てられた孫。 おばあちゃんも懐かしそうに姉妹で膝の取り合いをしたと昔話をする。 多分小さい頃は大好きだったおばあちゃん。 それが今では・・・ 「施設に入ってくれたらいいのに」と耳が遠くて聞こえないおば…
生きていくのは苦しく辛い、高齢者は口々に言います。 「早くお迎えが来れば良いのに」 「まだ迎えが来ない」 「長生きし過ぎた」 「死んだ方がマシ」 「辛い」 それを聞く家族は、またかとうんざりする人もいるし、 当惑するばかりの人もいるし・・・ 聞く…
ただ、歩く人。 その顔はまるで日雇い労働者。体脂肪率アスリート並み(恐らく)。 乳母車で出たっきり夜になり帰り道がわからなくなり、一晩ベンチで過ごしたこともある。 近所の人からは「おばあちゃんを外に出さないように」と言われたと家族。 認知症高齢…
誰しも生ききる時間のタイムリミットがある。 後どれくらいなのか、どこにも書いてないし、誰も知ることはできない。 もしかしたら母親をショートステイに預かって貰わないといけないかもしれない、と娘さんから電話があった。 契約しておけばいつでも利用で…
おばちゃんはとてもとても耳が遠かったのです。 自分をなじる声も、怒られていることも、それはそれは聞こえなかったので、 おばあちゃんはある意味幸せでした。 私が話しかけると、あははと大声で笑い、何もかもが、大したことじゃないのよと言っているよう…
3月とは言え、冷たい風を受けながら薄暗くなっていく駅までの道を歩く。 この角を曲がったところに父と娘は暮らしていた。 その父親が亡くなった家で彼女はまだ1人でいるのだろうか。 あちこちの家から夕飯の臭いがしてくる。 彼女もまた父親のために毎日食…
商社マンだった夫は、自分が何年も病院にかかっていて、血圧の薬を飲んでいることを妻には内緒にしていた。 ある日突然家の中で倒れ、その後脳梗塞の後遺症で左半身麻痺・高次脳機能障害を抱えることになった。 高次脳機能障害とは、人が人間らしさを発揮で…
ALSとは過酷な病気である。 日本でのALSへの呼吸器装着は2~3割と聞くが、自分だったらどうするだろう、身近にALS患者がいる場合、誰しもが考えてしまうことだろう。 私の担当していた利用者で、人工呼吸器を付けないと言い、亡くなった人がいる。 彼女は年…
毎回この言葉が聞かれます。 「長生きし過ぎたよ。こんなに長く生きると思っていなかったから」。 「こんな辺ぴな所に越して来るんじゃなかった」。 越してきてもう20年以上経つ・・・。 人は、どこまで傲慢で、後悔をする生き物だろう・・・ 海外で仕事を…
自分の思いが伝わらないということ、 報われないこと、 愛を受け取って貰っていないと感じる時、 愛が返ってこないと思う時、 人は悲しむのでしょう。 女手ひとつで子ども達を育てたおばあちゃんは、身体が思うように動かず、耳も聞こえず、人の世話になられ…
その人は薄っすらと涙を浮かべる。 おばあちゃんの世話が嫌と言うわけではないが、認知症の周辺症状には困ることも多い。 デイでお風呂に入って来てもまた家で入る。 沸いていない冷たい湯の中にも入ろうとする。 孫の服を絶対自分の物と言い張り睨みつける…
要介護5。 しかも独居。 介護度の中では最も重度であり、十分な介護が必要な状態である。 この頃では誤嚥性の肺炎などで入退院を繰り返している。 退院の頃になると決まって病院の方から、「どうしますか?施設を紹介しましょうか?」と在宅生活が困難だろう…
訪問看護師から再三電話がある。 「Ⅿさんがかわいそう。みんなで言ってるんですよ。食べる物が無くて」。 ヘルパーも言ってきた。 「かわいそうだなって思う」。 うんうん、そうかそうか、かわいそうか。 息子と2人暮らし。 本人は癌の転移で予後不良と思わ…
誰もがそこに人が住んでいるなんて思いもしなかった。 しかも子どもまで・・・ 皆が聞き返す、「あそこに人住んでたの?噓でしょ?家の外、粗大ゴミみたいな物がいっぱいあるよ」。 そう、私も知らなかった。そこに家族が住んでいたなんて。 玄関とおぼしき…
敬虔なクリスチャンであるその一家は、極々普通の家族。 何故引っ越してきたのか詳しくは聞かなかったが、数年経った頃思いもかけぬ理由でこちらに来たのだと知った。 担当である利用者の妻は高齢にも関わらず、これまで働く娘の代わりに家事を担ってきた。…
人は、働く人と働かない人に分けられる。 働かない人の中には、働きたくても働けない人と、働くことは出来るが働くのを止めた人がいる。 何を持って働くのかと考え出すと難しいので、ここでは単に「労働」としよう。 労働とは、1.からだを使って働くこと。特…
息子は優しい。 そして妻より母を選ぶ。 というケースは比較的多いように感じる。 現に、突然相談したいことがあるとやってきた長男は心の中の迷いを吐露し、私の一言でホッとし帰って行った。あと1週間そこらで有料老人ホームに入居することが決まっていた…
怒る・怒鳴る人はそこそこいらっしゃいますが、中でもダントツで記憶に残っている人が彼女です。 彼女のことは、彼女の父親を最初に担当し、うっすらとその存在を知り(介護協力は無かったので)、その後母親の担当になり強烈な印象を残しました。 残したと過…
彼は偉大なる父の影に怯え、永遠に虚構の世界で生き続ける。 「問題のあるケースである」と役所からの依頼。 初回訪問の面談は長時間に及び、彼の独特な言い回し、威圧的な態度を存分に振り回し、お役所仕事的な対応を嫌っていることがわかった。 母親と2人…
神様は認知症という素敵な贈り物をした。 長生きのご褒美です。大事なことも忘れますが、年を取って何が大事なことなんてそんなにあるでしょうか。 嫌なこと、嫁にいじめられたこと、夫からされた仕打ち、息子に叩かれたこと、そんなことも忘れてしまい、ほ…
生きることを拒否した人は、孤独を貫き最期を迎える。 利用者の妻が倒れ入院が長引き、介護の認定を受けている夫は在宅での生活が難しくなった。 いやサービスを受けてくれたら何とか在宅は可能なのだが・・・ ショートステイ先では暴言を吐き、早々に帰され…
夫婦というのは共依存そのものか。 無自覚に長い年月をかけてそれは形成される関係。 その夫婦と知り合って5年以上経つ。 最近利用者である夫は誤嚥性の肺炎を繰り返し、入退院を繰り返していた。 病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)は、ほとほと困っていた…
その人は寝ていた。 昼間何もすることが無かったら寝るしかないよね。 編みかけのセーターは私が担当になって4年以上経つが、殆ど進んでないような… 行く度に「少し太りなさったんじゃない?」と言われ、毎月見た目わかるぐらいの1㎏太ってたら3年で36㎏オー…
比較的社会的地位の高い老夫婦のお宅。 お嫁さん、お手伝いさんを囲みながらの遅めの朝食中だった。 ケアマネの訪問も数年のお付き合いにもなれば、応接室や座敷などではなく、こういった食事中と言う場面にもお邪魔させて頂けるようになる。 お客さんじゃあ…