愛を。

看護師ケアマネ。愛すべき利用者との関わりをちょっぴりフィクションほぼノンフィクションで。(記事の編集を随時行っています)

2016-01-01から1年間の記事一覧

礼を言う人

その人は薄っすらと涙を浮かべる。 おばあちゃんの世話が嫌と言うわけではないが、認知症の周辺症状には困ることも多い。 デイでお風呂に入って来てもまた家で入る。 沸いていない冷たい湯の中にも入ろうとする。 孫の服を絶対自分の物と言い張り睨みつける…

家に拘る人

要介護5。 しかも独居。 介護度の中では最も重度であり、十分な介護が必要な状態である。 この頃では誤嚥性の肺炎などで入退院を繰り返している。 退院の頃になると決まって病院の方から、「どうしますか?施設を紹介しましょうか?」と在宅生活が困難だろう…

かわいそうな人

訪問看護師から再三電話がある。 「Ⅿさんがかわいそう。みんなで言ってるんですよ。食べる物が無くて」。 ヘルパーも言ってきた。 「かわいそうだなって思う」。 うんうん、そうかそうか、かわいそうか。 息子と2人暮らし。 本人は癌の転移で予後不良と思わ…

そこ、に住む人

誰もがそこに人が住んでいるなんて思いもしなかった。 しかも子どもまで・・・ 皆が聞き返す、「あそこに人住んでたの?噓でしょ?家の外、粗大ゴミみたいな物がいっぱいあるよ」。 そう、私も知らなかった。そこに家族が住んでいたなんて。 玄関とおぼしき…

引き受ける人

敬虔なクリスチャンであるその一家は、極々普通の家族。 何故引っ越してきたのか詳しくは聞かなかったが、数年経った頃思いもかけぬ理由でこちらに来たのだと知った。 担当である利用者の妻は高齢にも関わらず、これまで働く娘の代わりに家事を担ってきた。…

働く人・働けない人・働かない人

人は、働く人と働かない人に分けられる。 働かない人の中には、働きたくても働けない人と、働くことは出来るが働くのを止めた人がいる。 何を持って働くのかと考え出すと難しいので、ここでは単に「労働」としよう。 労働とは、1.からだを使って働くこと。特…

迷える人

息子は優しい。 そして妻より母を選ぶ。 というケースは比較的多いように感じる。 現に、突然相談したいことがあるとやってきた長男は心の中の迷いを吐露し、私の一言でホッとし帰って行った。あと1週間そこらで有料老人ホームに入居することが決まっていた…

怒る人

怒る・怒鳴る人はそこそこいらっしゃいますが、中でもダントツで記憶に残っている人が彼女です。 彼女のことは、彼女の父親を最初に担当し、うっすらとその存在を知り(介護協力は無かったので)、その後母親の担当になり強烈な印象を残しました。 残したと過…

脅す者

彼は偉大なる父の影に怯え、永遠に虚構の世界で生き続ける。 「問題のあるケースである」と役所からの依頼。 初回訪問の面談は長時間に及び、彼の独特な言い回し、威圧的な態度を存分に振り回し、お役所仕事的な対応を嫌っていることがわかった。 母親と2人…

忘れる人

神様は認知症という素敵な贈り物をした。 長生きのご褒美です。大事なことも忘れますが、年を取って何が大事なことなんてそんなにあるでしょうか。 嫌なこと、嫁にいじめられたこと、夫からされた仕打ち、息子に叩かれたこと、そんなことも忘れてしまい、ほ…

拒絶する人

生きることを拒否した人は、孤独を貫き最期を迎える。 利用者の妻が倒れ入院が長引き、介護の認定を受けている夫は在宅での生活が難しくなった。 いやサービスを受けてくれたら何とか在宅は可能なのだが・・・ ショートステイ先では暴言を吐き、早々に帰され…

呼び戻す人

夫婦というのは共依存そのものか。 無自覚に長い年月をかけてそれは形成される関係。 その夫婦と知り合って5年以上経つ。 最近利用者である夫は誤嚥性の肺炎を繰り返し、入退院を繰り返していた。 病院のMSW(医療ソーシャルワーカー)は、ほとほと困っていた…

セーターを編む人

その人は寝ていた。 昼間何もすることが無かったら寝るしかないよね。 編みかけのセーターは私が担当になって4年以上経つが、殆ど進んでないような… 行く度に「少し太りなさったんじゃない?」と言われ、毎月見た目わかるぐらいの1㎏太ってたら3年で36㎏オー…

社会的地位の高い人

比較的社会的地位の高い老夫婦のお宅。 お嫁さん、お手伝いさんを囲みながらの遅めの朝食中だった。 ケアマネの訪問も数年のお付き合いにもなれば、応接室や座敷などではなく、こういった食事中と言う場面にもお邪魔させて頂けるようになる。 お客さんじゃあ…