愛を。

看護師ケアマネ。愛すべき利用者との関わりをちょっぴりフィクションほぼノンフィクションで。(記事の編集を随時行っています)

2017-01-01から1年間の記事一覧

邪魔な人

小さい頃働く両親に代わっておばあちゃんに育てられた孫。 おばあちゃんも懐かしそうに姉妹で膝の取り合いをしたと昔話をする。 多分小さい頃は大好きだったおばあちゃん。 それが今では・・・ 「施設に入ってくれたらいいのに」と耳が遠くて聞こえないおば…

試された人

生きていくのは苦しく辛い、高齢者は口々に言います。 「早くお迎えが来れば良いのに」 「まだ迎えが来ない」 「長生きし過ぎた」 「死んだ方がマシ」 「辛い」 それを聞く家族は、またかとうんざりする人もいるし、 当惑するばかりの人もいるし・・・ 聞く…

歩く人

ただ、歩く人。 その顔はまるで日雇い労働者。体脂肪率アスリート並み(恐らく)。 乳母車で出たっきり夜になり帰り道がわからなくなり、一晩ベンチで過ごしたこともある。 近所の人からは「おばあちゃんを外に出さないように」と言われたと家族。 認知症高齢…

時間が無い人

誰しも生ききる時間のタイムリミットがある。 後どれくらいなのか、どこにも書いてないし、誰も知ることはできない。 もしかしたら母親をショートステイに預かって貰わないといけないかもしれない、と娘さんから電話があった。 契約しておけばいつでも利用で…

聞こえない人

おばちゃんはとてもとても耳が遠かったのです。 自分をなじる声も、怒られていることも、それはそれは聞こえなかったので、 おばあちゃんはある意味幸せでした。 私が話しかけると、あははと大声で笑い、何もかもが、大したことじゃないのよと言っているよう…

縛られる人

3月とは言え、冷たい風を受けながら薄暗くなっていく駅までの道を歩く。 この角を曲がったところに父と娘は暮らしていた。 その父親が亡くなった家で彼女はまだ1人でいるのだろうか。 あちこちの家から夕飯の臭いがしてくる。 彼女もまた父親のために毎日食…

亭主関白の人

商社マンだった夫は、自分が何年も病院にかかっていて、血圧の薬を飲んでいることを妻には内緒にしていた。 ある日突然家の中で倒れ、その後脳梗塞の後遺症で左半身麻痺・高次脳機能障害を抱えることになった。 高次脳機能障害とは、人が人間らしさを発揮で…

動かなくなる人

ALSとは過酷な病気である。 日本でのALSへの呼吸器装着は2~3割と聞くが、自分だったらどうするだろう、身近にALS患者がいる場合、誰しもが考えてしまうことだろう。 私の担当していた利用者で、人工呼吸器を付けないと言い、亡くなった人がいる。 彼女は年…

悔やむ人

毎回この言葉が聞かれます。 「長生きし過ぎたよ。こんなに長く生きると思っていなかったから」。 「こんな辺ぴな所に越して来るんじゃなかった」。 越してきてもう20年以上経つ・・・。 人は、どこまで傲慢で、後悔をする生き物だろう・・・ 海外で仕事を…

悲しむ人

自分の思いが伝わらないということ、 報われないこと、 愛を受け取って貰っていないと感じる時、 愛が返ってこないと思う時、 人は悲しむのでしょう。 女手ひとつで子ども達を育てたおばあちゃんは、身体が思うように動かず、耳も聞こえず、人の世話になられ…